サイボウズ株式会社

2人に1人が働けないボツワナ農村で、家族を養う仕事を作り出すには?──育自分休暇

この記事のAI要約
Target この記事の主なターゲット
  • サイボウズ社員や関連業者
  • ボランティアや社会貢献に関心がある人
  • アフリカでの社会起業やビジネスに興味がある読者
  • 農村開発や経済格差問題に取り組む研究者や活動家
Point この記事を読んで得られる知識

この記事から得られる知識として、まず、筆者は元サイボウズ社員で、育自分休暇制度を利用し、ボツワナでボランティア活動をしていることがわかります。ボツワナはサバンナ地帯で、国土面積が日本の1.5倍あり、人口密度が低く平和的な国であることが紹介されています。ボツワナの経済はダイヤモンドと観光が主要業種であり、失業率が高い特に農村部では49%に達していることが問題として挙げられています。

筆者のプロジェクトでは、農村の所得向上を目指し、クラフト商品の製作と販売を通じて雇用を創出する試みがなされています。クラフトプロジェクトでは、村人の才能を引き出し、観光客や地元の人に売れる商品作りをメインにし、試行錯誤しながら進めています。この過程で、文化的背景やコミュニケーションの課題を克服しつつ、ボツワナと日本の双方で商品を展開しています。

活動を通して、村の女性たちが自分たちでクラフト作品を製作し、売上を上げることで、家族を一部でも養うことができるようになった経験が述べられています。さらに、プロジェクトの持続可能性や販売構造の構築に向けての試行錯誤が継続されていることも強調されています。筆者にとってこのプロジェクトは個人的な成長の場でもあり、チームワークと異なる文化背景の中での仕事の進め方において新しい発見があったと述べています。

Text AI要約の元文章
サイボウズ

2人に1人が働けないボツワナ農村で、家族を養う仕事を作り出すには?──育自分休暇

こんにちは。元サイボウズ社員の長山です。現在、育自分休暇制度を利用して、アフリカのボツワナ共和国で2年間のボランティア活動(青年海外協力隊)にチャレンジしています。今回は活動開始から約1年、ちょうど折り返し地点のタイミングでこれまでの活動を振り返ってみたいと思います。(後編:「ボツワナの農村格差はチームワークでなくせるか?」に続きます)

1年たって、まずはひとこと

赴任当初はホームシックで落ち込んだりもしましたが、1年もたつとすっかりボツワナになじんできました。日本に帰ったらボツワナのごはんが食べれなくなるとおもうと……今からボツワナが恋しいです。

こちらの主食はパリッジ。メイズ(甘くないとうもろこし)の粉を炊いたもの。もちもちしてて美味しい

ボツワナってどんな国? 覆るアフリカのイメージ

ボツワナにきてからはじめての育自分休暇日記なので、まずはボツワナを紹介したいと思います。

ボツワナ共和国は、アフリカ大陸の南部に位置するサバンナの地。日本の1.5倍の面積に人口約200万人(群馬県と同じくらい)が住んでいます。広々とした土地に少ない人口密度で、のびのびした雰囲気です。

ほぼ真っ平らな地形。砂っぽい土地に草木がもしゃもしゃと点在している

ボツワナ人はおしゃべり好きで、明るく、ちょっと甘えたところもあるけれど、そのぶん他のひとにも親切です。初対面でカタコトの外国人の私にも、とても気さくに話しかけてくれ、すぐに仲良くなってしまいます。カラっとした性格なのかと思いきや意外と嫉妬深い面もあり(男女関係のもつれによる事件がいっぱいあるらしい)、そんなウィットで人間的なところもまた魅力だったりします。

同僚とイベントスタッフの仕事をしたときの写真。 みんなノリがいい。

ボツワナの経済を支えているのはダイヤと観光、そしてウシ! アフリカのダイヤというとなんだか紛争とか武器とか怖いイメージがありますが、ボツワナはこれまでに紛争の歴史のないとっても平和な国です。

また、野生動物の楽園と高級ロッジがたくさんあります。目の前に広がるサバンナはまるで「ライオンキング」の世界感。たくさんの旅行者がボツワナの大自然に溶け込む高級リゾートロッジで、至福のときを過ごされています。

たとえばボツワナ北部のカサネは、一言で言うとリアルサファリパークです。野生動物保護区に加え、普通の国道にもゾウやキリンが現れます。ただ、ボツワナの人が住んでいる場所の大部分にいるのはウシやヤギといった家畜です。わたしも日々ゾウやライオンに出くわして怯える毎日とはほど遠く、道路の脇で草をむしゃむしゃしているウシやヤギを横目に、ほのぼの通勤するのが日常です。

人の数よりウシのほうが多い。ボツワナビーフは赤身で美味しいです。

ボツワナは政治が安定しています。ダイヤモンド輸出で得たお金をきちんと福祉や教育にあてていることもあってか、命にかかわるような貧困のイメージを感じることはありません。

もちろん道を裸足でかけまわっている子どもや電気のない村や、調子の悪いプリンターをたたいて直そうとするITオフィサーなど、途上国っぽいところもあります。でも、生活水準は首都に限らず地方の村も想像していたより近代的で、「紛争」「飢餓」「井戸掘り」といったいわゆる”アフリカのイメージ”は、みごとにくつがえされました

「失業率49%」を変えたい 同期隊員とクラフトプロジェクトを立ち上げ

なんとなくボツワナのイメージをつかんだところで、続いては私の活動に触れてみます。

私は現在、ボツワナの村落部の所得向上をめざして、同期の隊員とハンドメイドクラフト商品の製作・販売のプロジェクトにチャレンジしています。ここまでの道のりは楽ではありませんでしたが、ひとに恵まれ、楽しく活動しています。

「ボツワナ国内の都市と地方の経済格差の是正」

これがもともとボランティア要請書に書かれていたミッションでした。ボツワナの農村部では失業率が49%と高い数字で、村に仕事をつくるプロジェクトが求められていました。

2014年の3月にボテティ郡を管轄する役所に派遣され、コミュニティ開発を担当するスタッフとして働きはじめたのですが……。配属先の上司からは「村人の才能をひきだしてほしい」というコメントと担当地域の支援状況が書かれたレポートが手渡されたのみで、具体的なプロジェクトを指示されるわけでありませんでした。配属して1週間くらいは、オフィスでただ椅子に座っているだけの日々でした。

職場の上司。「コーラとチキンパイ買ってきて」と、よくお使いに出されます。

うーん、このままでは何もはじまりそうにないぞと思い、自作したクラフト(バックや花のコサージュ)をオフィスに持ち込み、「こんなの村でつくって売ってみたらどうでしょう?」と打診してみました。

というのも、私の担当する村では過去に、村人たちの所得向上を目指したソーイングやクラフトのプロジェクトをやっていたのですが、それがイマイチ盛り上がっていないようだったからです。

何がうまくいかない原因かはわからないけれど、その原因を念入りに調べることに時間をかけるよりも、まずはある程度の仮説から目に見える商品をつくり、プロジェクトとして走らせながらトライアンドエラーを繰り返したほうが効率がいいと考えました。そこで「自分のような初心者でも簡単につくれて、観光客やボツワナ人に売れそうなもの」をテーマに、試作品をつくってみました。

するとオフィスの女性たちに受けたんです。上司の一声で「やりましょう!」となりました。

こうしてプロジェクトの方向性は決まったものの、簡単には進みません。クラフトの作り方を教える女性が住んでいる村は、役所のあるレタカネ村から約170kmも離れています。村には電気がなく、彼女たちは現地語しか話せずコミュニケーションがとれません。

というか、英語もあまり得意ではない私は、役所のオフィサーとの会話も当時は簡単にはいきませんでした。そんな状況でしたが、同期の日本人の隊員やボツワナ人の同僚に助けられながら、なんとかクラフト制作のワークショップを開催しました。

はじめてのワークショップ。バックのつくり方を教えているところ。

「まだ来たばかりなのに頑張りすぎ」な私を救ってくれたもの

このとき、ボツワナにきてから約3ヶ月、仕事をはじめてから2ヶ月くらいの時期でした。ひとことでいうと、「まだ来たばっかりなのに、頑張りすぎ」ました。

そのころはほかの仕事も重なり、1ヶ月くらい自宅に帰れず、電気なし生活を送っていました。慣れない環境での責任のある仕事、自分では到底たちうちできなさそうな根深いボツワナの課題に気づいて打ちひしがれるなど、心身ともにまいってしまいました。

そのときに助けてくれたのが、サイボウズのみなさんから頂いたメッセージカードでした。

ボツワナに旅立つ日にサイボウズ社員のみなさんから頂いたメッセージカード

「ワークライフバランスに悩んだら・・・」

「ワークもライフも楽しむことです。楽しいバランスは皆違います。そして明日は今日とも違います。一年後はまた違います。自分は変わります。環境も変わります。 “生き残るものは変化できたものだけだ byダーウィン”」

「日本に帰りたくなった時」

「成長とは自分を変えること。環境を変えるのではなく、自分を変えて成長しろ! でも無理するな。あきらめること!\(- o-)/」

自分も、周りも、まだ変化の途中。今できないことはあきらめよう最低限のできることを積み重ねていけば、少しずつ変化して今とは違う結果になるはず。 みなさんの言葉に助けられ、前向きに考えられるようになりました。

「家族を3カ月養うお金」が稼げるように

その後、同期の隊員が村の女性向けにビーズアクセサリーのワークショップを開催し、商品の幅がぐっと広がりました。そこで本格的にブランド「Gift from Botswana(ギフト フロム ボツワナ)」をたちあげ、ロゴやカタログ、Webサイトを作り、販売促進に力をいれていきました。

4ヶ月後に首都ハボロネで行われた見本市では、計141点、約5万円分の商品を売り上げました。まずは順調なスタートでしたが、「ボランティアが帰国したあとも持続可能な販路と生産販売の仕組みをつくる」というのが難しいです。もちろん仕組み化するものは販売だけでなく、商品の生産管理や材料の調達も。試考錯誤の毎日です。

南部アフリカの伝統的なテキスタイルでつくった布ビーズのアクセサリー

もう1つやったことがあります。この取り組みをボツワナから日本へも広げたいと思い、日本向けの活動紹介サイトを作り、2015年からはアクセサリーのネット販売もはじめました

私はマーケティングアイディアを考えるのは得意ですが、物品管理や業務コーディネートが苦手。リーダーシップを発揮してプロジェクト運営のしくみづくりをしてくれるのは、同期隊員です。異なるバックグラウンドの彼女と仕事をするのは楽しく、自分にない新しい発想や仕事の進め方を学びました。これは、会社を離れて得られたもののひとつです。

同期隊員の圓山さん。ビーズ商品の開発と、プロジェクトの仕組みづくりを担当しています。

約9ヶ月の活動で、村の女性たちだけでクラフト商品をつくれるようになり、ひとりあたり13,000円ほどを稼ぐことができました。私が支援している村は、全体が政府の生活保護を受けていて、1家庭あたり月3,900円ほどを政府から支給されています。つまり彼女たちは「家族を3ヶ月養うお金」を稼いだことになります。

村では現金の支給以外にも食料品が現物支給されているので、このプロジェクトの収入だけで生活費をすべてまかなうレベルに達するまではまだ長い道のりですが、まずは村の方々が自分たちの力で稼ぎ、外の世界とつながる」ということが大事な一歩だと思っています。

文:長山悦子、編集:吉田将来


これまでの育自分休暇日記
ボツワナの農村格差はチームワークでなくせるか? ボツワナ育自分休暇日記(後編)
「長山、会社やめるってよ」 イケダハヤト×アフリカで働くことを選んだ4年目社員
育自分休暇日記──4年目社員、アフリカへ。会社を辞めて気付く「常識」のちがい

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