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NewsPicksは真の経済メディアになれるんですか?

この記事のAI要約
Target この記事の主なターゲット
  • 経済メディアに興味があるビジネスパーソン
  • NewsPicksのユーザーや潜在的なオーディエンス
  • メディア業界関係者
  • メディアの将来に関心がある一般読者
Point この記事を読んで得られる知識

この記事を読むことで、NewsPicksが目指す未来や、新しいメディアのあり方についての議論を知ることができます。NewsPicksの梅田優祐社長と佐々木紀彦編集長が、ピッカー(ユーザー)とのイベントを通じて、メディアとして何を目指すべきかを議論しました。

梅田社長は、ビジネスパーソンの視点から、ニュースを読むだけでなく「発見と理解」につながることの重要性を強調し、NewsPicksが単なるメディアではなく、ユーザーが自由に参加しながら価値を高めるプラットフォームを目指していると述べました。一方、佐々木編集長は、メディアとして経済をクリエイティブにする役割を果たすことが重要であり、分野、国境、読者・書き手の垣根を越えた融合を目指しています。

この記事では、NewsPicksがプロピッカー制度を導入し、専門家から多様な視点を取り入れ、コミュニティとしてのピッカーの価値を高めようとしていることも紹介されており、メディアの未来図に関するさまざまな意見が交わされています。

Text AI要約の元文章
サイボウズ

NewsPicksは真の経済メディアになれるんですか?

サイボウズ式とNewsPicksがコラボレーションをして進めてきた「Hot Topics」、最終回はNewsPicksの未来について。ピッカー(NewsPicksのユーザー)と一緒に考えるイベント「NewsPicksをこう変えろ!」を2015年3月23日に実施しました。ニューズピックスの梅田優祐社長、佐々木紀彦編集長を交え、49人のピッカーとともに熱く議論をした「新しいメディアの未来像」とは──。司会はサイボウズ式 編集長の藤村能光。

社長と編集長で目指すメディアの将来像は違う!?

サイボウズ式 編集長の藤村です。NewsPicksの共同で始めた「Hot Topics」は、NewsPicksで話題になった記事に寄せられたみなさんのコメントをもとに、そのテーマを深堀りするものです。その場をリアルの場にしたのが、今回のイベントです。テーマは「NewsPicksが目指す新しいメディアとその未来」です。「これから求められる新しいメディア」について考える場にできればと思います。ピッカーさんのコメントの中で「梅田さんと佐々木さんが目指しているメディアの方向が違う、実は仲が悪いんじゃないのか」という指摘がありました。

経済ニュースのキュレーションアプリ「NewsPicks」。ニュースや記事に対してコメントができる。コメントをするユーザーは「ピッカー」と呼ばれている。サイボウズ式とNewsPicksがコラボレーションして、ピッカーの間で話題になったテーマを深く掘り下げる「Hot Topics」を実施した

えー!? 会場で僕と佐々木の考えるメディアの方向性が違う、もしくは仲が悪いと思っている人いますか?

(会場より)判断するほどお二人を知らないです。理想のメディア像について表明されていませんよね。

確かにそうですね。では、なぜNewsPicksを始めたかをお話ししましょうか。もともと僕はビジネスパーソンの一人としてニュースを読んでいました。1ユーザーとして、どんなプラットフォームがほしいか? 興味のあるニュースに出会いたい。理解したい。それが一番の欲求です。アプリを作りたいのではなく、ビジネスパーソンとして何が困っているか、からスタートしたわけです。とにかくビジネスパーソンの役に立ちたい。今もこの欲求は変わっていません。NewsPicksが提供したいのは「発見と理解につながること」。ニュースを読むだけでは、表層的にわかったつもりになるだけで、発見や理解にはつながりません。

「発見と理解につながる」という視点でメディアを作っていると。

梅田優祐さん。ユーザベース 代表取締役共同経営者

例えば、尊敬する上司からのリコメンドが入ったニュースは、重要度があがったという経験はないでしょうか。周りの反応によって、理解、発見につながると思うのです。そんな信念で、ピッカーさんによるコメントを表示しています。もし、コメントが邪魔になるのであれば、喜んで外しますよ。コメントは、理解・発見のための方法にすぎません。でも、次世代のメディアにとって必要だと今の段階では信じているので、大切にしています。

ピッカーコミュニティは「メディアの未来」を開拓できるか?

「理解、発見につながる」という観点でメディアの価値を追求する上で外せないのは「ピッカー」の存在ですよね。

最初は自由な世界をつくるべきだと考えていました。従来のメディアは統制されたものでしたが、ユーザーがニュースの重要度を選べる自由なメディアにしたいと思ったわけです。しかし、やっていく中で、今はもっと自由と統制を融合していくべきだと思っています。自由か統制かという二元論ではない。たとえば、NewsPicksには「総合トップ」というカテゴリーがあり、17の記事が並んでいます。ここは、まさに自由と統制の融合。5~7の記事は運営側が選び、残りは、ユーザーのピックに基づくアルゴリズムで選んでいます。ピッカーにも融合があてはまる。自然に人気が出るピッカーさんだけでなく、強制的にスポットライトを当てる良さもあるなと気づいたのです。融合のバランスの答えは、NewsPicksのユーザーの規模によっても変わっていくと思っています。

これまではすべてのユーザーが等しく「ピッカー」として参加していましたが、編集部が16人を選定した「プロピッカー」制度が2015年3月から始まりました。この制度への賛否もたくさんあるようです。

ニューズピックスが開始した「プロピッカー」制度。各分野の「新時代プロフェッショナル」を16名セレクト。経済、ビジネス、医療、テクノロジーなど最前線で活躍するプロピッカーとともに、多様で専門的な場所を提供している

自由な中で自然にピッカーさんが集まって来ていただくのはありがたいのですが、もっと幅広いジャンルの方にも参加していただきたいという思いでプロピッカー制度を始めました。

YouTuberのまねをして始められたのかと思っていました。お金を払ってでも読みたいと思うピッカーさんのコメントもあります。高岡壮一郎さん(アブラハム社長)のコメントは1回10円払ってもいいです。

そういっていただけるのはありがたいです。会場はプロピッカーの大室正志さんがいらっしゃっています。

大室です。僕は16人のプロピッカーの中で唯一の医者です。ジョンソン&ジョンソンなど、企業20社の産業医をしています。編集部の方から「ニュースを適当に選んでコメントを書いてくれればいいから」と雑に頼まれて、私も雑に始めたのに、コメントを書くのにすごくハードルが高くなって、どうしようかと思っています。(会場笑)ネットでコメントを書く人は、一般的には意地悪な目線が多いんですね。でも、NewsPicksは前向きにがんばってコメントしている方が多い。だから、応援しようという気になりました。正直言いまして、こういうポジティブシンキングの雰囲気はネットワークビジネス以外では本当にめずらしいと思いますよ。産業医として、サラリーマンのいろんな悩みを聞いているので、そういう知見を活かして、NewsPicksではみなさんの悩み相談を連載していきたいと思います。有料ですけどね。

「有名な人を選ぶだけでは、従来メディアと変わりません」

どういう人をプロピッカーに選ぶかによっても、メディアの方向性は変わってくると思います。そこにこだわりはあるのでしょうか?

有名な人を選ぶだけでは、従来メディアと変わりません。NewsPicksから生まれて、羽ばたいていくスターが出てきてほしいと思っています。たとえば牧浦土雅さんのような方。今後は、スター候補を公募してもいいかもしれません。わたしが面接しましょうか?(会場笑)

(会場より)学生ピッカーに対してどう思っていますか?

本イベントはユーザベース本社で実施

学生かどうかはあまり意識していません。編集部にいる福田はまだ大学1年生ですが、彼はNewsPicksが始まったことからのピッカーで、プロフィールに高校生と書いてあったんですね。あまりにも大人びたコメントで、まさか本当に高校生だとは思っていませんでした。半年後にプロフィールが大学1年生に変わっていて、これは本当らしいぞ、と。今では編集部に入ってもらって、UBER特集を担当しています。

彼は今、日本で最もUBERに詳しいんじゃないでしょうか。最近、講演依頼まで舞い込んでるほどです。学生時代にどんなメディアに触れたかは、その後のメディア選びにもつながります。NewsPicksのビジネス的な側面からも、メディアの未来という意味でも、学生を意識した記事を入れたいと思ってます。

新しいメディアにとって「内輪感」は歓迎なのか?

ピッカーによるコミュニティが形成され、NewsPicksに多様な付加価値を与えています。ただ、ピッカーコミュニティには内輪感があるという指摘もありました。

(会場より)ランキングがいつも同じ顔ぶれでダイナミズムがないことが問題だと思う。

これは難しい問題ですね。新しいメディアにとって内輪感はある意味、すごくうれしいんですね。場として機能しているからこそですから。ただ、サービスを拡大していくにあたって、後から入りにくい印象があるのも事実だと思います。同じピッカーさんばかりが固定されるのではなく、どう新陳代謝をあげていくかはわれわれの課題です。たとえば堀江貴文さんはピッカーランキングの常連ですが、多様な方に活躍していただきたい。それがプロピッカーを始めた理由でもあります。

1つ言えるのは、まだまだユーザー数が少ないということです。都市と同じです。数百人の村だと、どんな人でもどこの誰かがわかる。でも100万人いると「自分感」が消える。私は福岡の北九州出身で、北九州はちょうど人口100万人程度なのですが、それぐらいの人数がいると多様性が出てきます。それと同じです。まずは100万都市を目指さないといけないと思っています。

「経済をクリエイティブにする」にメディアの未来はあるのか?

(会場より)NewsPicksはメディアを目指しているのでしょうか、それともツールとして可能性を追求していくのでしょうか。ユーザーがコンテンツに参加するという意味ではクックパッドに似ていると思います。レシピというコンテンツを作っているのはユーザーなんですが、フリーライドだと外には思わせずに上手にビジネスをしています。梅田さんは、ビジネスパーソンの役に立ちたいとおっしゃっていて、生産性を向上するツールを目指されていると思うんですが、その先にメディア企業としての姿があるのでしょうか

メディアとツールの境目はどんどんなくなっていき、融合したものが次世代には求められている。だからNewsPicksは、そのメディアとツールの壁を取り払おうとしていると思ってください。

NewsPicksに来て8カ月たってようやくわかってきたことがあります。NewsPicksはどんどん進化して、単なるメディアではなくなっていく。じゃあ、変わっていく先に何があるか。一言で言うと「経済をクリエイティブにする」ことだと思うんです。どうすればクリエイティブな経済メディアになるか。ポイントは5つの壁を破って、新しい融合を生み出すことだと思っています。

  
    1.ビジネス、テクノロジ、デザイン、スポーツなど分野の“壁”を飛び越えて、今までにない組み合わせを創る。
  
    2.国、文化の垣根を取り払っていく。まずは海外からの情報を増やし、ゆくゆくは日本から英語のコンテンツも発信する。
  
    3.読者、ユーザーと書き手の垣根を取り払って融合していく。もはやメディア側だけでコンテンツを創る時代は終わった。
  
    4.プラットフォーム、メディアを融合させていく。単なる流通業でも、単なるコンテンツメーカーでもない新たな形を創る。
  
    5.時空も取り払えるメディアになる。“今”ばかりでなく、“過去”から蓄積されてきた世界や日本の知的遺産を現代に提供する。

佐々木紀彦さん。ニューズピックス 取締役。NewsPicks編集長

クリエイティブの象徴でもあるインフォグラフィックを担当している櫻田からも一言。

編集部でインフォグラフィックを担当している櫻田です。NewsPicksはソーシャルメディアの場を提供しているメディアだと思っています。クリエイティブであるためには、建設的に議論が進まないといけないと思うんです。ネガティブな方向に進むとクリエイティブでなくなる。決算レポートでも、そのあたりを踏まえてデザインしています。

新しいメディアの役割として「経済をクリエイティブにする」ということがありました。もう少し具体的に説明すると?

ビジネスパーソンの生産性を上げ、新しいものを創発することに役立つ経済メディアということです。

わたしは、社会、世の中を形作るのは、政治、教育、メディアだと思っています。実は、アメリカから帰国して日本を変えるために政治家を目指したことがありますが、私は、政治家に必要な根回しがとても苦手で、早々にあきらめました。(会場 笑)それに、やはりメディアが大好きなので、メディアを通じて実現しようと思っています。5つのポイントで言い漏れたのは、そのようなメディアで収益モデルを確立することですね。新しいメディアでもきちんと収益が出せないといけません。

行動直結型、コミュニティ化……真のメディアになるために

(会場より)今、シナプスのようなオンラインサロンが人気です。堀江貴文さんのサロンは1万円の会費で600人が集まっています。NewsPicksも有料会員限定のオンラインサロンや、人気ピッカーと直接議論できるような場を設けてはどうでしょうか。

将来的にはぜひカフェを開きたいですね。丸の内あたりで「NewsPicksカフェ」をやるのはどうかなと思ってます。ちなみに、みなさんが交流したいピッカーさんは、どんな方でしょう? 佐山展生さん、朝倉祐介さん、楠木健さん、山崎元さんあたりでしょうか。

ピッカーさんのコメントの中でも「行動直結型メディア」になってほしいという要望がありました。それに近いイメージでしょうか。

サイボウズ式 編集長の藤村

それは1つの将来像です。ビジネスパーソンの意思決定につながることが目的なので。どの段階ではじめるかの問題だと思っています。まずはメディアとして確立するのが先。メドは300万ユーザーかな。

(会場より)コミュニティ化が本当に必要でしょうか。自然発生的なものだけでいいのでは?

運営者側の思想が必要だと思うんですね。たとえば、Facebookは最初から実名という思想を貫いている。今日いただいた意見で、それがまだまだ弱いということを感じました。コンテンツ・機能開発で向上していきたいです。

NewsPicksと考える「メディアの未来」

NewsPicksを通じて「メディアの未来」を議論してきました。今後の展開については何か考えていることはありますか?

アートやファッションの分野も始めたいと思ってるんですが、みなさん、NewsPicksにあった方がいいと思いますか? (会場から、半分くらいの手があがる)。意外と支持率が高いですね。欧米では、アートやファッションといった分野も厚く取り上げているので、そこは我々もやっていきたいなと思っています。経済メディアをクリエイティブにすることにもつながるので。

アップルウォッチにしてもデザインが奥深いところです。僕も、こういった分野は絶対やらないといけないと思ってます。

(会場より)教養が深まるような記事を増やしてほしいです。

本当にやりたいです。今も書籍とのタイアップはやっているのですが、徐々に増やしていきたい。ビジネス書を読むよりも、ビジネスと関係ない教養書を読んだほうが、ビジネスに役立つと思っています。「ヒットを生むために、シェイクスピアのオセロを読め」みたいな企画はとてもいいですよね。

※NewsPicksのコンテンツや機能に関する議論の内容について、番外編「NewsPicksに1500円払うのは高すぎ? スタンプは必要?」で取り上げています。

49名のピッカーとNewsPicks、サイボウズ式の面々

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