株式会社デンソー

CO₂削減の救世主になるかもしれない「固体酸化物形燃料電池」デンソーが取り組む、環境性向上に向けた2つの挑戦

この記事のAI要約
Target この記事の主なターゲット
  • エネルギー技術に興味がある技術者
  • 環境問題に関心がある企業関係者
  • 脱炭素社会の実現を目指す政策立案者
  • 水素社会の促進に関与する研究者
Point この記事を読んで得られる知識

この記事はデンソーが取り組んでいる固体酸化物形燃料電池(SOFC)の開発に関する内容を詳細に紹介しています。SOFCは、高温で作動することで高効率な発電を可能にする特徴を持ち、また水素だけでなく都市ガスやプロパンガスといった多様な燃料を使用できるため、幅広い燃料多様性を持つ点で注目されています。これにより、現在から水素社会までの移行期にシームレスに対応し、CO₂削減に貢献できる可能性があると述べられています。

デンソーは、SOFCの環境性をさらに高めるための二つの取り組みをしています。一つ目の取り組みは、燃料の再利用を可能にするための独自のエジェクター技術による水素の再循環です。これにより、無駄なく水素を利用して発電効率を向上させることができます。二つ目は、発電時に生じる熱を有効に活用するための熱マネジメント技術を駆使した温度制御の向上です。これらの取り組みによって、SOFCの効率と耐久性が向上しています。

デンソーは、小型でありながら大型火力発電所を上回る効率のSOFCの開発を目指しており、将来的にはSOFCを通じて省エネの進展を図り、カーボンニュートラル社会の実現に向けて寄与し、エネルギーセキュリティの向上も目指しています。

Text AI要約の元文章

2023.4.5

技術・デザイン

CO₂削減の救世主になるかもしれない「固体酸化物形燃料電池」デンソーが取り組む、環境性向上に向けた2つの挑戦

デンソーが取り組む「固体酸化物形燃料電池」の環境性向上脱炭素に向け“発電効率の高いものを出していく”を目指す開発

  • 株式会社デンソー 環境NS開発部 NEGP開発室Takamasa Osugi

ここで登壇したのはNEGP開発室の大杉氏。SOFC(Solid Oxide Fuel Cell)の必要性と、SOFCの環境性を高めるデンソーの取り組みについて発表しました。

※本記事は2023年2月20日、株式会社デンソーが主催するウェビナー「DENSO Tech Links #17」の講演内容を掲載したLogmiからの転載記事です。

この記事の目次

    大杉氏の自己紹介

    Takamasa Osugi: こんばんは。SOFCについて、大杉から説明します。はじめに、簡単に自己紹介をします。私は入社以来、非自動車分野、特に住宅関連商材の開発にずっと携わってきており、社内でも非常にレアな経歴です。そういった経緯もあり、2019年から今の業務であるSOFCの事業企画を担当しています。

    SOFCとは

    では「SOFCとは?」ということですが、SOFCはSolid Oxide Fuel Cellの略で、日本語の正式名称は「固体酸化物形燃料電池」という少々長い名前になります。一言で言うと「水素から電気を作る発電機」になります。

    発電の原理はSOECの逆反応となり、水素と酸素の化学反応により電気を取り出すことで発電するといった原理になります。

    (スライドを示して)燃料電池の種類はSOFC以外にもたくさんありますが、こちらには代表してPEFCとSOFCの例について示しています。SOFCは電解質にセラミックを用いているところが特徴で、それによって約700℃といった高温で作動することができるので、高効率であるということです。

    あとSOFCは、水素をはじめ、都市ガスやプロパンガスといった多様な燃料が使えることが特徴的な燃料電池です。

    なぜSOFCが必要なのか

    では、なぜSOFCが必要なのかですが、水素社会は全部が水素になる社会ではないと思っています。また、水素が普及してくるまでの間も水素由来の燃料や、多種多様なカーボンニュートラルな燃料が混在してくるだろうと考えています。そんな中で、幅広い燃料多様性を持つSOFCは、現在から水素社会にかけてシームレスに対応できる、CO₂削減の救世主になるのではないかなと考えています。

    少し種明かしが遅くなりましたが、なぜ水素だけではなくて、都市ガスやバイオガスといったカーボン由来の燃料を使用できるのかについて説明します。

    SOFCの内部には改質装置と呼ばれる、燃料を水素に変換できる装置が組み込まれています。この改質装置で変換された水素を燃料として発電することをSOFCの内部でやることによって、多様な燃料が使えることになります。

    SOFCの環境性を高める2つの取り組み

    冒頭で「SOFCは高効率です」とお話ししましたが、私たちはさらに環境性を高める取り組みにチャレンジをしています。SOFCの環境性向上の課題として、大きく2つ取り上げました。

    (スライドを示して)1つ目の課題はセルスタック出口燃料の再利用ということで、こちらの絵を見てください。

    上から燃料を投入して、白い円筒のセルスタックというところで発電をしていくのですが、上から下にかけて発電をしていく過程を模式的に描いています。この時に投入した水素の量を100とした場合、セルスタックの中で水素を使って発電をして、このセルスタックの出口で水素の燃料を使いきる。すなわちゼロになるところが本来の理想的な使われ方ではありますが、セルスタックの内部で水素を使いきってしまうと、セルスタックがダメージを受けてしまうため、少し燃料を余らせて制御することをしています。

    ここで一役買っているのが、この上部にあるエジェクターという部品です。エジェクターはデンソーの独自技術で、カーエアコンにも採用されている高品質・高信頼性のある部品です。SOFCではこのエジェクターで出口から使わなかった未利用の燃料を再度リサイクル(再循環)させ、無駄なく水素を使うことで発電効率の向上に寄与しています。

    2つ目の課題です。最大効率が出る温度に温調ということですが、SOFCにはもっとも良い最大効率を出すための温度帯が存在し、かつちょうど良い温度に均一にしていくところが非常に重要なポイントでです。発電時に出る熱を余すことなく有効に使いきるという観点で、今まで培った熱マネジメント技術を駆使して、耐久性の向上に取り組んでいます。

    このように、自動車分野で培った技術を他の製品に応用していく取り組みは、全社を通じて行われています。

    デンソーの目指すもの

    (スライドを示して)では最後に「デンソーの目指すものとは?」ということで、スライド左側では、横軸に発電出力、縦軸に発電効率を示したグラフを紹介しています。グラフ内右側には大型の火力発電所の出力と効率をプロットしてあります。私たちはその効率を上回るものを小型化していく。そして発電効率の高いものを出していくことを目指して開発を進めています。

    現在は、デンソー内の工場などに設置して実証評価を開始しようとしている段階です。

    スライド右側には目指す未来を示していますが、やはりまだカーボンニュートラルな燃料がすぐに普及してくるというような段階ではないので、まずは高効率なSOFCで省エネから始めていく。

    そしてカーボンニュートラルな燃料が普及し始めると同時に、脱炭素化へ向けて貢献していくことと、分散型電源の特徴を活かして、エネルギーセキュリティの面でも貢献していきたいと考えています。こうしてSOFCを通じて、幸福循環社会の実現に向けて、少しでもお役に立てればと考えています。

    では最後になりますが、一足飛びにカーボンニュートラルを実現するのは現実的に難しいことかと思いますので、まずは省エネを極めて、カーボンニュートラルな世界を目指したいという意味で「省エネからその先へ共に未来を創っていきましょう」とさせていただきました。

    以上となります。ご清聴ありがとうございました。

    • クリーンなエネルギー社会実現を目指す、デンソーの燃料電池「SOFC」開発
    技術・デザイン

    COMMENT

    あなたが実現したいこと、学びたいこと、可能性を広げたいことに、この記事は役に立ちましたか?
    ぜひ感じたことを編集部とシェアしてください。

    お問い合わせはこちら

    RELATED

    水素ドリブン 水素が灯す、私たちの暮らし
    • ビジョン・アイデア2023.3.28 脱炭素化の希望、「水素社会」実現に立ちふさがる課題に挑む クルマのシステム開発で培った強みを活かし、パートナーと共に水素領域に挑戦する
    • 技術・デザイン2023.1.24 水素社会の未来を見据えデンソーが挑む、水電解装置「SOEC」開発 モビリティの技術がかなえる、再生可能エネルギーを無駄なく使い水素を作る仕組み
    • 技術・デザイン2023.1.24 クリーンなエネルギー社会実現を目指す、デンソーの燃料電池「SOFC」開発 熱マネジメント技術で、環境性と経済合理性の両立を目指す

    「できてない」 を 「できる」に。
    知と人が集まる場所。

    デンソーのオウンドメディアDRIVENBASEについて トップページを見る

    Pick Up人気の記事