サイボウズ株式会社

リクルート「30歳以下は誰でも新卒採用」の裏側──上司は強制しない、大枠OKで突き進む

この記事のAI要約
Target この記事の主なターゲット
  • 企業の人事担当者
  • 組織マネジメントに興味がある人
  • 就職活動中の若者
  • 中途採用を考える転職者
Point この記事を読んで得られる知識

この記事を読むことで、リクルートが2015年に始めた「30歳以下」という新卒採用の取り組みについて、その背景や実現までのプロセスを知ることができる。この取り組みのきっかけは、一人のメンバーが提案した企画であり、企画段階ではできるだけ少人数で進めていたことが特徴である。直属の上司のみの承認を得て進められたこのプロジェクトは、組織内外で大きな反響を呼び、自社の採用にもっと自由を取り入れたいと考える企業や人々からも高く評価された。

記事では、企画が進む中で上司がどのようにサポートし、関係者の調整やブラッシュアップにどのように取り組んだのかが記されている。個々の意欲を重視したチームワークによって、企画が実現に至った様子が強調されている。また、リクルートの組織文化において、「当事者意識」や「社会の不を解決する」ことが重視されており、個人の提案が支持されやすい環境であることも描写されている。

リクルートの採用プロジェクトが示すように、個の意思や社会的意義を考慮することで、より広がりのある企画が実現できる可能性があることを示している。特に、プロジェクトの進行においては、関係者との積極的な調整とフィードバックを取り入れながら進める姿勢が重要であることがわかる。この記事は、組織の改革や新しい人材採用の方法を模索する担当者にとっても参考になる内容となっている。

Text AI要約の元文章

あのチームのコラボ術

リクルート「30歳以下は誰でも新卒採用」の裏側──上司は強制しない、大枠OKで突き進む

自社の新卒採用の対象範囲を「30歳以下」に──。リクルートが打ち出した新たな採用の取り組みが話題を呼んだ。すでに学校を卒業していたり、ほかの会社で働いていても、年齢が30歳以下であれば2016年4月に入社可能な人が応募できる。同社の採用グループのチームが実現した。

きっかけはある一人のメンバーの企画提案。「リリース前までは直属の上司以外には知らせずに進め、それでもチームにたくさん支えてもらった」というから驚きだ。奇抜な企画の実現を支えたチームワークの裏側を、サイボウズ式編集長の藤村が聞いてみた。

「企画はどう通したの?」「うちもやってみたい」。社内外から大反響

新卒採用の仕組みはかなり話題になっていましたね。実はリクルートさんが発表した1日後に、サイボウズも「U-29採用」という新しい採用を発表したんですよ(笑)

そうでしたね、拝見しました。(笑)

反響はいかがですか?

定量的にも定性的にも、かなり良いですね。本体サイトは6500シェア以上、ログミーさんに掲載してもらった記事は5000シェア以上いきました。

夏目和樹さん。株式会社リクルートホールディングス 人事統括室 ホールディングス採用グループ。「新卒採用を、もっと自由に」の企画を担当した。

ものすごい反響ですね…! 定性的な反響はどんな感じですか?

社内外からの問い合わせがすごくたくさん来ています。特に社内の反応が良好ですね。自分たちも同じようにしたい、という問い合わせが多かったですね。どう企画を考えたのか、その企画をどうやって通したのか。新卒採用をもっと自由にしたいと思っている方からたくさんご連絡をいただきました。

「おもしろ企画」だけではだめ、「やる意義」を考え抜く

私は新卒Web採用グループで、広報チームのリーダーをしています。今回の企画は夏目が担当して、佐藤は同時期に進めていた別企画を担当してもらっていました。

ログミーさんの記事によると、夏目さんはこの企画について、リリースまでは周囲にあまり知らせず、直属の上司のみに相談していたと。この進め方がびっくりしたんですよね。夏目さんが相談した上司が倉増さんですね。

そうです。最初は、年末年始ごろに夏目に「採用で何か企画をやって」と伝えたのが最初ですね。それがちっとも進まなかったんです(笑)

企画をやれ、と言われたのにもかかわらず、ずっと手をつけていませんでした(苦笑い)。前職で面白採用やバズらせる採用企画もやってきていたのですが、リクルートであえて同じようなことをやる意義がわからなくて。

企画がなかなか進まないことに対して、倉増さんはどう対応されたんですか?

多少は夏目をせっついてみました。でも、夏目は無理にやらせてもやらないタイプの人間だとわかっていたので、彼のやる気をさまたげている障壁は一体何なのかを考えるようにしました。面白いことをやりたいとは思っているし、実行する能力があることはわかっていたので、「何がやりたいの?」ということを聞いていましたね。

倉増泰葉さん。株式会社リクルートホールディングス IT人材統括室 ホールディングス採用部 新卒Web採用グループ。本企画のリーダー的存在で笑顔がすてき

すごく良い上司ですよね。僕が言うのもなんですけど、もうちょっと怒ったほうが良かったんじゃないかなって思います(笑)

怒ってもやらないですからね(笑)。無理矢理やらせても、今回のような企画は考えなかったと思いますし。それよりも自由にやりたい企画をやってもらいたいと考えていました。

企画を形にする上で、夏目さんが一番苦労した点はどこだったんですか?

採用の歴史を作ってきたリクルートという会社が、新たに実施するのにふさわしい企画はどのようなものなのかを考えるのが、一番苦労しましたね。

「社会の不の解決」を考え抜き、「大枠OK」で突き進む

夏目さんがやる気になり、最初に企画案を見たときに倉増さんはどう思いました? 即OKを出したんですか?

OKかNGかでいえば、概要はすぐにOKを出しました。夏目からやりたいという強い意思を感じましたし、この企画は「マーケットの不を解消する」という社の姿勢に沿うものにもなっていると思ったので。ただ、細かい言葉の表現や見せ方は、関係者との調整が必要な内容だなという印象でしたね。

これまでにない新しい企画を社内で通していくのは、かなり大変だったんじゃないかなと思うのですが。

大変は大変でしたね……

具体的に何名くらいの方に確認をとっていったんですか?

たしか夏目が数えてたよね?

たしか全員で11、12人くらいですね。僕は倉増さんが調整してくれているのを横で見ていたんですけれど、いわゆるネガティブなイメージを思い浮かべる調整ではなくて、ブラッシュアップに近いものでした。「こうしたほうがもっと面白いものになるんじゃないの?」といったコメントをしてくださる方もいて。

企画自体に反対する声はなかったんですね。

細かな言葉づかいでチェックが入ることはありましたが、やりたいことの概念にNGが入ることはなかったです。せっかく良いことなんだからちゃんと世に出せるようにしよう、と色々アドバイスをいただきました。たとえば私の專門ではない法律などの視点からもチェックしてもらえたことは、助かりました。

では企画を形にする苦労はあまりなかった?

苦労したのは調整ではなくて、リクルートがこの企画をやる意味は何なのかを突き詰めることでした。自分たちのメッセージは正しく伝わるかどうか、というところです。

アウトプットをちょっと間違えるだけで、周囲に誤解を与えてしまうかもしれない。ちゃんとこの企画が世の中を変えていくきっかけになるように、どうやったら正しく伝わるのかを考えていました。

個人のやりたいことを大切にしながら、会社としてのメッセージも重視できているのはすごいと思います。普段のお仕事でもそうなんですか?

社内で企画を提案すると、よく「大枠OK」というコメントをもらうことは多いですね。その人がやりたいことかどうか、社会の不を解決するものかどうかをクリアしていれば、あとは実現に向けてすり合わせをしていきます

本人の意思を大切にすること、社会の不を解決していくことを大切にしようという概念は、グループ全体で共有できていると思います。

佐藤亮太さん。株式会社リクルートホールディングス 人事統括室 ホールディングス採用部 新卒Web採用グループ。夏目さんをロールモデルとして、広報部で日々奮闘中

圧倒的な当事者意識──自分の意思が弱いと協力は得られない

そういった感覚が全社で共有できているのはすごいですね。なぜ実現できているのでしょうか?

おそらく「人」でしょうね。リクルートは昔からずっと人の採用に力を入れていますし、入社した後も周囲や上司から「やりたいことは何か」を聞かれます。そういう環境で過ごし続けるうちに染み付いていくんだと思います。

佐藤さんも自分のやりたいことをよく聞かれたり、自分から言ったりするんですか?

聞かれますね。僕は夏目さんと一緒に仕事をしたいと思って、部署のみんなの前で「広報をやりたい」と伝えたんです。そうしたらスキルや経験があったわけではないのに、広報に配属してもらえることになって。仕事も「やりたい」と言えば、やらせてもらえる環境だと思います。

僕や佐藤のような自由にやりたがる人間を束ねて、ちゃんと事業につなげていくチームにする力やマネジメントの力はすごいと思います。おかげで、僕は自由にやりたいことがやれますし、個人ではできないような大きなこともチームの協力を得ることで実現できる。個を最大化させてくれるチームだと思いますね。その分、リーダーは大変かもしれませんが(笑)

あまり役職にとらわれないで、柔軟に対応しています。このチームの場合、たとえば私だったら「リーダーだから」とやることを決めるのではなく、「この人が苦手なことは自分がやろう」とメンバーの弱みをカバーして、強みをもっと突き抜けさせるようにしているんだと思います。

互いに補いあいながら、柔軟に動いているんですね。リクルートさんって個人主義の会社だと思っていました。

いや、その認識は外れてないと思います(笑)

でも、個人主義でありながら、チームやマネジメントが機能しているというのが面白いです。既存のピラミッド型の組織構造とは違って、ネットワーク型の組織なのかもしれませんね。

個を生かす組織になっているんだと思います。あとは、おせっかいな人が多いかもしれないですね。「圧倒的な当事者意識」なんて言葉を使うことがあるんですけど、面白いことや良さそうなことをやろうとすると、いつのまにか人が集まるんです。その人のミッションではないことでも、面白いと思ったらけっこうなパワーをかけて協力してくれたりします。

自分の仕事に関係のないことでも協力してくれるんですね。

そうですね。ただ、自分の意思が強くないと全然協力してもらえないですけど

提案する人に「何かを作りたい」「もっと良くしたい」という意思があれば、他の人もその企画を形にするために、本気で一緒に動くというカルチャーはありますね。

僕たちは、個に合わせてチームを変えていける

広報チームは、どうやって信頼関係を築いていったんですか?

チームとして動くようになったのは2014年の10月ごろから。特にチームの関係性を深めるために特に何かをしたわけではないですね。

チームでお互いを理解するために飲みに行く、なんてこともほとんどないですよね。

それでチームワークが発揮できるのはすごいです。

「広報チーム」として常に動くわけではなくて、たとえば「新卒採用のサイトを作る」というプロジェクトがあって、そのゴールに向かうために必要なメンバーが集まって協力する。ゴールに向かうプロセスを通じて、チームになっていったという感じがします。

プロジェクトが一人で達成できるものであれば、チームで動く必要はないんですよね。たとえば、今佐藤はイベントの準備を進めていますが、僕はまったく把握できていなくて。そうやってアメーバのように柔軟に動きながらプロジェクトを実行していくチームになっています。僕たちは個に合わせてチームの形をどんどん変えていける。それが面白いですよね。

(執筆:モリジュンヤ、写真:尾木司)
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尾木 司

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