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父「子どもの環境を整え、あとは本人次第」 、息子「父親より先輩の存在が大きかった(笑)」──実践子どもIT教育のホンネ

この記事のAI要約
Target この記事の主なターゲット
  • IT教育に関心のある親
  • プログラミング教育に興味を持つ保護者
  • 子育てにおけるテクノロジーの活用を検討している人
  • IT業界で働く親
  • 子どものインターネット利用について考える教育者
Point この記事を読んで得られる知識

この記事から得られる知識は、ITエキスパートである清水誠さんが、息子の郁実くんをどのようにIT教育を通して育ててきたかという実例です。清水さんは、子どものデジタルツールへのアクセスを積極的に許可し、最新のMacを与え、古いデバイスは親が使うといった育て方をしてきました。このような環境下で育った郁実くんは、幼少期からゲームやプログラミングに興味を持ち、中学時代にはプログラミングのために自らJavaを学ぶなど、自主的に学びを進めるようになります。記事では親子の交流が垣間見える会話から、郁実くんが「父親より先輩の影響が大きかった」と述べるように、成長していく過程で周囲の環境や様々な刺激が彼の成長に寄与していることがわかります。また、親である清水さんは、教育環境を整えた上で、その後は子ども自身に任せるという方針を貫いており、郁実くんが独立して活動することを信頼しながらもサポートを惜しみません。このインタビュー記事は、ITに関する子育ての参考として、また親子の信頼関係の築き方としても示唆に富んでいます。

Text AI要約の元文章

父「子どもの環境を整え、あとは本人次第」 、息子「父親より先輩の存在が大きかった(笑)」──実践子どもIT教育のホンネ

Webアナリスト 清水誠さんの「ITと子育て」の実践過程は、「「外で遊べ」「人との対話が大事」なんて子どもにとって余計なお世話」「子どもにこそ上位機種のMacを与える、親はお古で良い」の通り。では、こんな清水さんの子育ての考え方に対して、息子の郁実くんは率直にどう感じていたのか? 親子の会話から見える、こんな本音──。

少年ホワイトハッカー、幼稚園前にPCゲーム。「ゲーム課金はしなくていいと思います」

清水さんの実践子どもIT教育について「前編」「後編」を通じて、いろんなお話をお父さんからうかがいましたが、親子がいい友だちという感じで、お父さんから郁実くんへの愛があふれていたんですよね。その中で、小さい郁実くんが電子ガジェットで遊ぶのを制限しなかったというお話があったの。郁実くんの一番古い「デジモノ」の記憶って何?

うーん、幼稚園生かそれより前に、家にあった古いパソコンを触ってゲームをやっていました。それが最初の記憶ですかね。基本的にブラウザゲームをやっていたと思います。

参考:4〜13歳のまとめ :: 「清水 誠」公式サイト

そうなんだ。お父さんはチャットの利用なんかも心配で、始めは一緒にログインしたり、1時間で自動的にログアウトするようなソフトをインストールして時間制限したりしていたって。

ぜんぜん覚えてない。

1時間で時間切れになった時に、延長してーって騒いでたでしょ。

参考:9歳の息子がDropboxの更新通知を使ってチャットしてきたぁ :: 「清水 誠」公式サイト

しかも課金していたって聞きました。

ああ、そうですね。色々な種類のゲームをしてました。

課金って、ウチは子どもにさせないんですよ。

それでいいと思います。(一同爆笑)

清水郁実くん

ええー!?

この人(お父さんを指して)が勝手にいろいろ買ってくれたんですよ……。一緒に買いものにいったら課金2000円分買ってあげるとか言って。

なんだバレてたのか(笑)

ああ、パパが郁実くんと遊ぶのを好きだったんですね。お父さんと一緒に遊ぶのは楽しかったですか?

はい。普通に(IT以外で)遊んでいても楽しかったです。

お父さんレベルの人とネットやITのことを話すのに慣れていると、普通の人と話すときイラッときたりしませんでした?

うーん、あまりイラッとはこないです。

ITの話だと同世代とは差がつくけど、それ以外にも会話のネタはあるからね。

中学受験期は淡々と勉強、「マインクラフトのMODを作るためにJava覚えたい」

学校ではどう過ごしているんですか。

クラブに入っています。コンピュータ部と理科部、ほとんど出ていないですけど。

忙しいものね……。恥ずかしながら私もまったく詳しくないけれど、SECCON(日本国内最大のセキュリティコンテスト)とかDEFCON(世界最大のハッキングイベント)とか、周りに言っても通じないでしょう?

ああ。でもどっちかっていうと、技術よりもそういう実績的なもののほうが理解されやすいんですよね。わかりやすいから。

学校の先生たちは何か言っています?

特に何も言われないですけど、わりとサポートはしてくれています。僕の学校は土曜にも授業や行事があるんですが、土日は地方のイベントやいろいろあって休むことが多くて。

それをこころよく受け入れてもらえるので、助かってます。学業が忙しくて時間が取られてしまうので、そこは結構厳しいですね。

勉強の大変な学校にいるわけだけれども、中学受験をクリアして入学したんだよね。自分の活動と中学受験を両立するって大変じゃなかった?

小学校以前では僕はほとんど何も(開発に関することを)していなかったので、そうでもなかったです。受験勉強の忙しい小5、6年のころはほとんどマシンを触らず、軽くゲームをしながら勉強していました。自然と、ゲームとかにはあきらめはついていました。中学校に入ってからは、受験に集中してして良かったと思っています。

自分で勉強とゲームとのバランスをコントロールしていたんだね。自分の中での優先順位はきちんとついていた、ってことかな。

淡々と勉強していたよね。はまったマインクラフトもがまんして。

父が勤務していたアメリカで雪遊びした時の思い出をマインクラフトで再現

マインクラフトは中学校入るまでずっとPC版のライセンスを買ってほしいって言っていて、中学入ってから1年間くらいひたすら遊んでいたんですよ。で、本格的に勉強と言うかパソコン関係をやり始めたのが中学2年生の夏ごろで、それからはゲームをしなくなって、ひたすら(プログラミングの)勉強をするようになりましたね。

オンラインゲームで「遊ばされる」よりも、自分で組み立てるものに興味が移っていったんですね。

マインクラフトのMODを作るためにJava覚えたいーって言っていたよね。中学入ってからの加速がすごかった。

本当に、ゲームなんかも一切やらずに一日中勉強するような感じでしたし、それのおかげだったのかなと思っています。

父親より学校の先輩のほうが環境として大きかったと思う(笑)

郁実くん、プログラミングや開発を「勉強」って呼んでいるもんね。(感動)

(笑)。ほかにいい表現が見当たらないんで。

最初はパパに聞いていたけどだんだん……。

最初はって言っても、僕ほとんど聞いてない(笑)。僕がJavaやりたいって言った時もこの人ワカンナイって言うから「えっ」てなって。それでひとりで入門サイトを見ていろんなキーワードを暗記していたんですけど、結局一回もコンパイルせず、3日くらいで飽きちゃったんですよ。しばらく離れていたんですけど、Processingという言語でシミュレーションのコードとか書き始めて、次第に外の勉強会とかに参加し始めて、それで加速したんだと思います。

自分よりも年齢が上の人たちの中で、自分一人だけ子どもというのはちょっと勇気がいりませんか。

セキュリティ関係のイベントに出た時、警備の人に「子ども! 子ども!」って連呼されて(笑)。何歳か聞かれました。周りも結構びっくりしていました。

そういうところに子どもはいないから、いつも注目されるよね。

大人の中に入っていくのは、最初は結構怖かったんですけど、話を聞いてみると今の大学生や高校生の本当に強い数人の先輩たちも、若いころメディアに取り上げられて大変だったみたいで。

若いがゆえの注目は仕方ないんだよね。最近はあちこち行っているよね。

新潟、福岡、名古屋……。ひとりで新幹線に乗るんですけれど、交通費がめちゃくちゃかかるんで、そこを親に負担してもらっています。

一人で旅に出すという、お父さんからの信頼が厚いよね。お父さんは一番の理解者なんですね。郁実くんが小さい時から、子ども扱いはせず対等に接するという原則だったそうですよ。

子ども扱いされるってことはなかったんですけど、どっちともいえないです(笑)。あまり意識してなかったです。

まぁ、押しつけはしてないよな、自然にね。昔はアプリ開発を一緒にしたかったけど、郁実がだんだんセキュリティ系に興味を持って。それはそれで好きにやらせたし。

昔は一緒にやりたいなって思ったんですが、開発はあんまり楽しめなくて。だんだんセキュリティのほうにそれて。

お父さんがその世界で本当に有名な、エキスパートじゃないですか。こういうプロが隣にお父さんとしている、環境が恵まれているという意識はありますか?

環境がいいというのは感じていますけれどね。父親よりは今の学校の先輩のほうが環境として大きかったと思います(笑)。父親は技術的なことを聞いても頼れなくて。

いや、僕は開発はやらないからさ……。

そう言っていつも逃げている。

スルドイ(笑)

清水誠さんを前にそんなことを言えるのは、世界広しといえどさすがの郁実くんだけだ(笑)。

都心の「隠れ家」で男二人、「親子ルームシェア」状態

お父さん、いつも郁実くんと「二人でバカやってお母さんに怒られていました」っておっしゃっていたんですが。とにかく仲良し、お友達父さんですよね。

泥遊びもネトゲもいっしょにやったね。

ネットゲームに一緒にログインして遊ぶ親子(6歳の時)

あぁ、家族で旅行に行った時にホテルのベンチで一緒にゲームしていて、それで怒られたことはありました。でも最近はどうですかねぇ。

近ごろはもう技術面でもそんなに接点ないね…。

分析とセキュリティ、それぞれの世界で頑張っている?

特に話すこともないですし。お父さんも個人で色々やっているから。

郁実くんが都心の中学に入学して、元々の千葉の自宅からの通学があまりに大変なので、今は平日の間はお父さんと都心のマンションで二人暮らしですよね。

隠れ家みたいな、ね。

そういえば平日の晩ゴハンとか、どうしているんですか?

父親は帰ってくるのが基本的に遅いんで、ほとんどひとりで外食してますね。

スマン…。

都心なので、そんなにお店は多くもないんですが。近くのラーメン屋がすごく好きで結構行ってるんですけど、たまにめちゃくちゃ体調壊します(笑)。

だからやめろと言っているのに(笑)。早く帰ってくる時は、一緒に食べられるよね。

完全に自立したもの同士、ルームシェアみたいな感じですよね。

そんな感じです。僕が出張に行っている時などは母親も千葉の家から来てゴハンを作って泊まっていく。

昔は週末には千葉に戻っていたんですけど、とにかく場所が遠いので不便で。以前は中学に通うために5時起きで、睡眠時間もちゃんと取れなかったので。

千葉の家は、お母さんが開いている料理教室用にカスタマイズして、リフォームもしてあって、寝室は物だらけ。僕らが寝る場所もないような状態ですね。家族3人がそれぞれ好きなことを好きなようにやっているんですよ。

ご家族それぞれに専門性があるんですね……!

「15のころ、僕もこんな感じでありたかった」

聞けば聞くほど面白い……。このパパにしてこの息子ありというか。清水さん、ご自分が若いころはこんな感じでした?

うん。こんな感じでありたかったけれど、昔はそういう環境はなかった。だから環境が障壁にならないようにしてあげたいと思って。環境面は整えて、あとは本人次第。

お父さんが理想としていた環境を、郁実くんはもらっているんだ。

うん、いい環境にいるなとは思いますね。そのおかげで色々活動できているという自覚があります。

今度DEFCONに一緒にいくよね。ラスベガスで開催されれる、世界最大規模のイベントです。僕も通訳として同行します。向こうでも自分の仕事はできますし。

夏休みだから、観光にも行けるね。

観光はどっちでもいいかな……。忙しいので、観光していると参加できないイベントもあるから。

早めに現地入りするから山に登ってキャンプしよう! 英語がもっとできるといいよね。英語ができると(プログラミングでも)得でしょ。オープンソースのプロジェクトでコミットしたり、いろんなドキュメントも読める。

うーん、読むのはいいんだけど、でも話せないからさ。

アメリカの大学に行ったら? 大学はどこ行きたい?

筑波とか……。

東大進学のための塾に行っていたけど、考え直してやめたんだよね。

「周りがほめ始めたら危険」、父が教えるIT道の身のこなし

こんな話をしてくれる郁実くんがまだ15歳というのは、衝撃です。これから先、何か野望はありますか?

こんな感じで活動をして行けば、将来何かができるんじゃないかなとは思います。特に何かしたいというのはないんですけど、手近な目標としてはCTF(編注:コンピューターセキュリティ技術を競う競技)をイベントとして広めたくて、取り組んでいます。

僕自身も10年後に何やっているか分からないし、ひたすら目の前のことを楽しくやっていて、振り返ったら実績ができている。そういうもんだよね。

私はマーケティングの仕事をしていて、清水さんの講演に何度も通って、話を聞かせてもらっているんです。毎回、清水さんのアウトプットが変わっていくのが、すごくカッコ良くて。その活動の軌跡が周りのひとのモチベーションを高めているなって感じます。

郁実も知らないうちにその影響は受けているかもしれないね。これいいかも、と新しいものに飛びつく勇気とか行動力、柔軟さが大事だよ。

ここを進んでいこうというのがあるわけではないですし、ひたすら漠然とした目標に向かって、ちょっとずつ進めている感じだと思います

それでいいんだと思う。変な目標立てると固執しちゃうからね。「それでなきゃだめだー」なんて固執しない。僕自身の方針としては、周りからほめられ出したらもう潮時だと思っていて。そんなのムリだろうって言われるような逆境の時の方が、「やってやるぞー」とやり甲斐を感じる。

ほめられ出すと安心してしまい、自分が怠けちゃう。周囲もすでにできることしか期待してくれなくなる。だからほめられ出すと危険だと思うんですよね。子どもなのにすごい、なんてほめられて調子に乗るともう伸びなくなる。

周囲が理解し始めたということは、その分野も陳腐化し始めるということでしょうか?

分野にもよるんでしょうけれどね。僕は新しいことを切り開く仕事をしているので、陳腐化し始めたら、「他の人でもできるでしょ」と他へ移って行く。確立された分野を覚える段階では、固執した方がいいかもしれないけど……まぁ、そういうことはまだ気にしなくていいよ。

うん、あまり気にしてない。

次にやりたいことは何ですか?

競技系ですかね……。情報オリンピックとか、興味はあります。

郁実くんが飛び立っていくのを、応援しています!

2015年8月11日「外で遊ぼう」「人との対話が大事」なんて子どもにとって余計なお世話──実践子どもIT教育
2015年8月19日子どもにこそ上位機種のMacを与える、親はお古で良い──実践子どもIT教育
2015年8月25日父「子どもの環境を整え、あとは本人次第」 、息子「父親より先輩の存在が大きかった(笑)」──実践子どもIT教育のホンネ

(文:河崎環、写真:橋本直己)

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執筆

ライター

河崎 環

ライター/コラムニスト #ロックと共に漕ぎぬ #何者 #河崎、酒活やめたってよ

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