株式会社デンソー

変革し続けるデンソーへ。

この記事のAI要約
Target この記事の主なターゲット
  • 企業のDX推進に関心のあるビジネスパーソン
  • 自動車産業で働く技術者やエンジニア
  • 中小企業の経営者やマネジメント層
  • 職場改革を進めたい人事・管理職
  • デジタル化に興味がある学生や若手社員
Point この記事を読んで得られる知識

この記事から得られる知識は、デンソーにおけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進において、システム面だけでなく、人間関係の面でも改革が求められているということです。石川靖之氏が述べているように、DX推進では単にデジタルツールを導入するだけではなく、社員の心をどう変えていくかが重要です。そのためには現場の信頼関係を築き、社員の本音を引き出し、コミュニケーションを密にすることが求められます。また、彼の過去の経験から、違和感に真摯に向き合う姿勢が品質や人間関係の改善に役立つことがわかります。さらに、彼が強調するチームワークの重要性と、感謝の念を伝えることの必要性も記事から学べます。これらの要素が組織文化のトランスフォーメーションに寄与し、デンソーが社会に貢献し続けるための原動力になるという視点も提供しています。したがって、技術的なイノベーションを推進する一方で、人と人とのつながりを重視し、社員のマインドを変革することの重要性に焦点を当てた内容が記されています。

Text AI要約の元文章

2023.5.19

キャリア・生き方

変革し続けるデンソーへ。

DXの旗振り役が向き合うのはシステムではなく社員の心

セミコンダクタ事業部DX推進室室長の石川 靖之のミッションは、設計、製造現場のデジタル化です。業務効率を高めるために単にツールを導入するだけでなく、現場と本音で話し合える関係を築くことで、デンソーのこれからの未来をつくっていこうとしています。人と向き合う石川の真摯な姿勢はどんな経験によって育まれたのでしょうか。

この記事の目次

    CAE開発の経験を活かし、設計、製造現場のデジタル化を推進

    セミコンダクタ事業部は、自動車用半導体のアナログIC、パワーモジュール事業を担う部門です。学生時代から半導体の研究に没頭してきた石川は、自動車業界の電動化を予見し、この世界に飛び込みました。自動車向けIC(集積回路)などさまざまな製品の設計に携わった後、セミコンダクタ事業部のDX推進室長を務めています。

    石川 「DX推進室を任されたのはつい最近(2021年)のことで、もともとはCAE(Computer Aided Engineering)の開発を専門としていました。CAEというのは、実際に試作や実験をしなくてもシミュレーションを実施し、可視化しながら短時間で設計に問題がないかを確認できる工学支援システムのことです。デジタルを活かして業務の効率化を図るという点では、DX推進に近しいものがありますね」

    DX推進室は、CAE開発で培った知見を活かし、設計、製造現場で属人化されている、あるいはブラックボックス化してしまっている業務を見える化。さらにデジタルで効率化することで、たとえ若手でも担当できるよう業務を標準化すると同時に、本当に時間を使うべきところに時間を使えるように、業務負荷を軽減していく取り組みを行っています。

    DX推進にあたり、デジタルツールを導入する際のルールづくりや、社員にツールを使いこなしてもらうための教育を開催するのも石川たちの仕事です。

    石川 「従来の業務を変えることは非常に大きなエネルギーが必要になります。今まで慣れ親しんだ手順や作業を変えることに抵抗感を感じるのは当然のこと。不安や心配、さまざまな気持ちを聴き、受け容れて、お互いが納得してはじめて変えることができると思っています」

    そんな石川が何よりも大切にしているのは、現場からもメンバーからも信頼を得ること。信頼関係がなければ、実際に現場でツールを根付かせることや、本音で会話することもままならないと考えているからです。

    石川 「組織のトップ同士でDX推進の内容を決めたとしても、現場の理解をすぐに得ることはできません。現場で働く人たちにDXの意義を知ってもらい理解してもらうためには、私たちがどれだけ相手の立場に寄り添えるかが大切です。そのためには、現場に何度も足を運び、実際にツールを試してくれている人たちに使用感を確認して、相手の状況などを常に把握することを意識しています。

    本来、現場の人たちにも業務を改善してもらいたいという想いがありますが、普段の業務に集中する中では、そうした余裕を持ちにくかったり、気がつかなかったりするのが現状です。だからこそ、われわれが生の声を引き出して、実現していくことが必要だと思っています」

    現場の人たちの生の声をいかに引き出して、変えていくことができるか。また、その変化を持続するものにできるか──。石川は、現場の方々と一体になり課題に向き合っています。

    違和感に真摯に向き合うこと

    DXを推進するためには、相手の立場に寄り添うことが大切だと語る石川。現場に足を運び、メンバーと向き合う石川のスタイルはどのように築かれてきたのでしょうか。

    石川: 「入社して間もないときのことです。集積回路の設計を担当していて、検査の際に怪しい波形を確認したものの、きっと検査環境だけに起因するものだよなと都合の良い判断をして見過ごしてしまったことがあるんです。それがきっかけで結果的に安定動作しない製品を生み出すこととなり、顧客や関係部署に多大な損害を出してしまいました……」

    そこからは、問題の解決に向けて、数カ月にわたりひたすら奔走する日々だったと言います。

    石川: 「寝ても覚めても解決することに必死になっていた毎日が、今でも痛いほど心に残っています。なぜ、あのとき、都合の良い判断をしてしまったのか。なぜ、直接確認をしなかったのか。もっと真摯に向き合わなかったのかと、自分の弱さを責める毎日でした」

    石川はそれ以降、意識が大きく変わりました。ちょっとした違和感に対して、真摯に向き合うこと。それは、品質のみならず、人間関係での違和感にも早期に気づく今のスタンスに深く影響しています。

    また、上司やメンバーがずっと寄り添ってくれたおかげで、原因究明やメカニズムの解明までしっかりとやり切り、大きな壁を乗り越えられたことも、身を持って学んだ経験だったと語ります。

    チームワーク形成が成功の鍵となる。DX推進チームを束ねる石川の想い

    チームワークやコミュニケーションを大切にする石川の姿勢は、DX推進室のメンバーにも共有されています。仕事の推進状況だけではなく、常に業務の中心となる課長とのコミュニケーションを密に取り、メンバーのモチベーションを把握することも大切にしています。

    石川: 「従来の業務を変えることは非常に大きなエネルギーが必要になると言いましたが、メンバー任せでいては、彼ら、彼女らも疲弊してしまう可能性があります。メンタルの強さも人それぞれなので、メンバーの一人ひとりの状態を把握して適切にサポートすることを課長ともども意識しています。加えて私個人としては感謝を伝えることをとくに大事にしているんです」

    感謝を伝えることを大事にしなくてはいけない出来事が過去にあったと、石川は言います。

    石川: 「実は、過去に部下からぐっと抑えた口調で反論されたんですよね。それは日ごろから貯めこんだ感情が爆発した様子でした。そのとき、ハッとさせられました。チームワークやコミニケーションを大切にすることを意識していたはずなのに、そもそも感謝の念が自分に足りていなかったことに気づかされました。それ以来、自分の意識や言動に対してもっと細かく向き合い、いつも感謝の想いを素直に伝えるよう心がけています」

    自分が見えていないところで、思っている以上にメンバーは多くの感情や不安を抱いていると気づいた石川は、1on1を実施したり、定期的にアンケートを取ったりして、本音の声を拾い上げるしくみづくりをしています。

    石川: 「常に状況を把握しておくために、みんなとのつながりを大切にしています。普段とは違ってネガティブな発言が出てきたな、と気づいたときがあれば、決して現場任せにせず、自ら直接、会話することで改善をしていくように心がけています」

    DX推進室長として、現場と目線を合わせることも、メンバーに感謝を示すことも、チームワークを発揮する価値の大きさを知っているからこそできることなのかもしれません。

    真のDX推進のために──変革すべきは「しくみ」だけではなく「社員のマインド」

    2021年の立ち上げ以来、すでにいくつものプロジェクトを完遂してきたDX推進室ですが、他の先進的な企業と比べるとまだまだ遅れていると石川は 話します。

    石川: 「DXと言っても、目先は業務のデジタル化に留まっています。真にめざすのは、事業部としてビジネスそのものの形を変容させることです。とくに製造現場にはデジタル化の余地がまだまだあります。AI導入などもその一つですね。これからも効率化を重ねて、現場の社員が新しいことに挑戦できる時間的余裕をどんどん増やしていく好循環を生み出していきたいです」

    そのために石川が向き合うのは、やはりメンバーや現場で働く人たちの心です。

    石川: 「DX推進室の支援がなくとも、現場単位で自走して変革を続けられるような企業体質に変えていくこと。これが私のミッションだと思っています。その上で大切なことは、しくみを変えることだけではなく、社員のマインドを一番に考え、真摯に人と向き合うことを大切にすることなんです」

    危機感を持って変革にあたっていると語気を強める石川はこう言います。

    石川: 「とくに半導体は、自動車の電動化の流れに乗ってどんどんと需要が伸びている分野です。業務を効率化して新しい仕事に着手できる余裕を持たなくては、需要に応えてさらに売り上げを伸ばしていくことは難しいでしょう。DX推進室は機能組織として、事業部の戦略が実現できるように変革を起こし続けることをモットーに取り組んでいます」

    そうすることで、デンソーが社会に向けて良い製品を生み出し続けることができ、良い製品をお客様に提供できることにつながると石川は信じています。

    石川: 「変革の原動力を突き詰めると、やはり『お客様のために何かしたい』という想いにつながっていくと思います。若いころはそのことに気づけませんでした。だからこそ、DX推進を進める中で、社員のマインドを一番に考え、会社の大義、個々人の業務の意義を実感し、使命感を持って働く大切さを伝えていきたいですね」

    変革は一度きりで終わるものではありません。世の中のスピードはとても早く、仕事のやり方を変革し続ける企業でなければ、競争力を維持することはできません。デンソーがこれからも社会に価値を提供し続けるために、石川は真摯な姿勢でデンソーの文化のトランスフォーメーションに挑戦しようとしています。

    ※記載内容は2023年4月時点のものです。

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