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なぜPTAや子供会から「逃げる」のか──コデラ総研 家庭部(50)

この記事のAI要約
Target この記事の主なターゲット
  • 保護者
  • 教育機関の関係者
  • 保護者会・子供会の関係者
  • 共働き家庭の親
  • 家庭のコミュニケーションに興味がある人
  • 社会問題に関心がある人
Point この記事を読んで得られる知識

この記事を通じて得られる知識は、PTAや子供会の役員や委員に参加することについての現実と、その背景にある社会的な問題点である。多くの学校では保護者が子どもが在学中に1度は役員を務めるよう設定されているが、それに対する抵抗や不安を抱く保護者が多い。その理由は主に、活動に伴う人間関係への苦手意識、他の子供の扱いが苦手であること、さらには子供を通じた人間関係自体への不安が挙げられる。また、共働きや離婚の影響で平日の活動に参加することが難しい保護者も増えている。この現状が社会全体における子育て支援の意識低下につながっている可能性も示唆されている。記事は、単なる個人の問題から、より大きな社会的背景が存在することを指摘している。

Text AI要約の元文章

tech

なぜPTAや子供会から「逃げる」のか──コデラ総研 家庭部(50)

テクニカルライター/コラムニストの小寺信良さんによる「techな人が家事、子育てをすると」というテーマの連載(ほぼ隔週木曜日)の第50回(これまでの連載一覧)。今回のお題は「なぜPTAや子供会から「逃げる」のか」。

文:小寺 信良
写真:風穴 江(tech@サイボウズ式)

うちの小学校もそうだが、公平負担の原則により、保護者は6年間のうちで必ず1度はPTAの役員や委員をやるように設定されているところは多い。とはいえ低学年のうちはやはり親からなかなか離れないし、6年生になれば中学受験で忙しくなるかもしれない。計画性のある保護者の間では、比較的子供の手がかからない3年生から5年生ぐらいの間で委員をやるというのが、ひとつのコツのようなことになっている。実際うちのPTAでも子供会でも、学校や地域社会との関わりが長い5年生あたりの保護者が、非常に積極的で大きな戦力になっている。

その一方で、6年生になってから抽選で委員になった保護者は、あまり積極的ではないケースが散見される。それまで希望して委員になるチャンスが5回あったわけだが、結果的にずっとこの手の保護者ボランティアから逃げ続けてきた結果、とうとう逃げられなくなった6年目、というなし崩し的な理由で委員をやっているということは、想像に難くない。

保護者ボランティアから逃げる理由は、自分の経験からすると、3つに分類できる。

(1)活動に付随する人間関係が苦手
一般的にPTAや子供会役員は、女性の世界になりがちだ。男社会の中でバリバリ仕事をしている女性の中には、こうした女性だけの世界が苦手な人も珍しくない。委員会が終わったのにずっと廊下で子供の話をしてるのは時間の無駄だと感じているが、参加しないと何を言われるか分からないという不安もあり、結果的にはフラストレーションを溜め込んで家庭や職場に戻ることになる。リアル社会でもネット社会でも、コミュニケーション疲れは同じように起こる。活動そのものには参加する意思はあるが、それに付随する人間関係が面倒、というケースである。

筆者の場合、委員会活動になると、男性が自分だけというケースがほとんどだ。2人1組になる作業では、なんだかバツが悪い思いをすることもある。だが、しょっちゅう顔を出してると向こうもだんだん慣れてきて、そういうものだとして扱われるようになり、子供の話や世間話もそれなりにできるようになる。

委員会後の雑談も参加するケースはほとんどなく、さっさと帰ってきてしまう。女性の保護者も、そのあとすぐ仕事に戻る人がそこそこいるため、雑談に参加しないから云々という話は聞かなくなった。何か噂されているのではないかと心配する気持ちはよく分かるが、そういうのは気にしてもしょうがない。

(2)子供の扱いが苦手
一方で自分の子供以外の扱いが分からないという人もいる。保護者ボランティアは、多くの子供達のために奉仕する作業なわけだが、子供のリーダーとなって引率したり指導したりするのはそれなりにコツがいる。生意気なことを言ってくる子もいるわけで、そういう子をうまくあしらうことができないケースだ。

筆者もここは苦手な部分である。こちらは男性なので、ちょっと叱ったりすると、子供としてはガッツリ怒られたように感じるため、さじ加減が難しい。また子供たちを集めたり並ばせたりするときに、女子の体を触らないように気をつけたりと、男性ならではの苦労が多いところである。

だからそこはあまり無理をせず、そういうことが得意なお母さんにお願いするなど、役割を分ける側として全体に貢献するよう心がけている。

(3)子供を通じた人間関係が苦手
そもそも自分の子供のこともよく分かっていないというケースもある。子供の交友関係も把握していないし、これまで参観日もずっとパスしてきたので保護者の顔も全然分からず、子供の学校なのに保護者が登校拒否みたいになってしまっている。こうなってしまっては、保護者の代表として委員をやるのは苦痛以外の何者でもないだろう。

筆者も娘が小学2年生ぐらいまでは、こんな感じだった。だが一人で娘を育てることになり、否応もなく学校行事に巻き込まれていく過程で、3年ぐらいかかって馴染んでいった。委員ではなくても資源回収や校内清掃のときに学校に行くと、まず校務の事務員さんと顔見知りになり、ちょこっと校長先生や教頭先生と挨拶して立ち話をするようになれば、学校側との信頼関係ができる。そうなれば、保護者の信頼関係は勝手に付いてくる。

◆     ◆     ◆

最後にもうひとつ、少し深刻な話をしなければならない。保護者ボランティア活動に参加してこないのは、本人にもどうにもならないケースが出てきているのを感じる。会社員として働いている場合、平日の昼間の委員会活動を行うには有給休暇を取らなければならないわけだが、会社側の理解がなくて休みを取らせてくれないということもあるようだ。

女性の就業率が7割に、離婚率が2割に達する中、土日や夜も仕事を休めないお母さんもいる。これは実際、子育てする母親を労働力として強く搾取する業態があるということである。そしてこのことが大きく社会問題として取り上げられない背景には、社会全体が「子供を育てる過程で必要な保護者活動が存在する」という知識を、失いつつあるのではないかという気がしてならない。(つづく


本連載では、読者の皆さんからの、ご意見、ご質問、取り上げてほしいトピックなどを、広く募集しています。編集部、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(編集部)


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